自賠責保険の仕組
自賠責保険について誤解されている方が多くいますのでご説明致します。
自賠責保険は、自動車事故による対人賠償保険のことで、他人に与えたケガに対する賠償保険のことをいいます。
ですから、他人に与えたケガ以外で「もの」に対する損害については支払われません。
例えば、相手の車の修理代・ガードレール・塀などの物損事故がそれに当たります。
また、自分の怪我に対する補償を自分の加入する自賠責保険により受けることができないことも覚えておいて下さい。
POINT自賠責保険で支払いが出来ないケース
・「もの」に対する損害賠償(対物賠償)
・自分の運転のケガに対する補償
・対人にあっても、ケガをした相手が100%の過失が認められる場合
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は自動車損害賠償補償法(自賠法)に基づき、全ての自動車に対し契約することを義務づけている強制保険です。
自賠責保険の支払いに関する基準とその限度額
国土交通大臣および内閣総理大臣が定めている支払基準に従って自賠責保険の保険金は支払われます。(自賠法16条の3)
・傷害による損害…治療関係費・文書料・休業損害・慰謝料として支払い限度額120万円の範囲内で支払われます。
・後遺傷害による損害…逸失利益および慰謝料として、後遺傷害の程度に応じた等級に従い、75万円~40000万円を支払い限度として支払われます。
・死亡による損害…葬儀費・逸失利益・被害者本人および遺族への慰謝料として、支払限度額3000万円の範囲内で支払われます。
なお、死亡するまでの傷害による損害は、別途傷害による損害の支払いと同様に支払われます。
自賠責保険の慰謝料算出基準
自賠責保険では慰謝料は1日あたり4,200円として定められ、対象日数分を合計に算出しています。
ただ、その「対象日数分」というのが問題点となりその算出となる基準を以下の2つの数値例と比較し、少ない方の数値を対象日数分として説明致します。
基準 | 1.治療期間(事故から完治日まで)の全日数 |
2.実通院日数(入院日数+通院した日数)×2 |
上記のいずれかの少ない方に4,200円をかけて計算します。
例)30日間入院し、退院後100日間通院(実際の通院日数は40日間)とした場合
1.「治療期間」は30+100=130日
2.「実通院日数」は(30+40)×2=140日
よって少ない方の130日が対象となり、130×4,200円=546,000円が自賠責保険の基準による慰謝料額となります。
逸失による限度額制限(重過失減額)
自賠責保険は被害者保護の観点から被害者に重大な過失があった場合にのみ、加害者の過失割合に応じて一定の減額がなされます。
加害者に重大な過失が認められる時、重過失減額の対象となります。
その重大な過失とは被害者に「7割」以上の過失がある場合になりますが、実際の減額については加害者側に10割過失がない場合で無い限り、以下の割合でしか減額されないことを説明致します。
被害者の追失割合 | 減額割合 | |
後遺傷害または死亡によるもの | 傷害によるもの | |
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | 2割減額 |
9割以上10割未満 | 5割減額 | 2割減額 |
自賠責保険の請求と支払い
1.請求
被害者は自動車安全運転センター発行の「交通事故証明書」を取得するか、加害自動車に備え付けられている「自賠責保険証明書」を加害者から提示してもらうかの方法により、加害者が加入している自賠責保険会社をしっかり特定させ、加害者が加入している自賠責保険会社に対し、必要書類を付けて損害賠償金または保険金を請求致します。
2.事務手続き
自賠責保険会社は被害者から提出された書類等を受理し、書類上の不備がないかを確認した上で自賠責損害調査事務所に送付致します。
3.調査
自賠責保険会社から送付を受けた自賠責損害調査事務所は、公正・中立な立場で加害者の賠償責任の有無や発生した損害の額などを調査致します。
4.報告
自賠責損害調査事務所は、必要な調査をした結果を自賠責保険会社に報告致します。
5.支払い
自賠責保険会社は、自賠責損害調査事務所の報告を受けて支払額を決定し、請求者(被害者)に対して支払い致します。